A. iPhoneにみる「付加価値」を巡る格差-西野・グローバルIT研究所-
B. iPhone、OS無料アップグレードの苦闘、ついに報われる!-シリコンバレー101-
結論、Aはつまらなかった、Bは面白かった。
その理由を述べていくが、内容そのものよりも、文章としてこの二つの良し悪しは、どこにあるのかをみていく。それによって、良い文章を書くために必要なことは何かを改めて考える機会としたい。
文章を書く上で自分が教科書としているのが、理科系のための作文技術(仕事で文書を書く必要がある人は理科系の作文技術を読むべきだ)だ。この書評であげられている"文章を書くための四つの原則"に従って二つのコラムを読んでいく。
第一の原則: 必要なことは洩れなく記述し、必要でないことは一つも書かない
Aでは、日本で購入したiPhoneが中国で使えない、と店員に言われたエピソードが必要ではないと思う。
なぜならば、その前後のパラグラフでなされている主張を補足するものでないからだ。
エピソード前後のパラグラフでは、携帯電話市場においてキャリアとメーカーの分離がされていることで、メーカーが端末仕様の独自性を高めることができる、という主張がなされている。
しかし、エピソードでは中国と日本の携帯通信サービスが異なる、ということが紹介されている。このエピソードとその次のパラグラフを抜かしても、前後の文章は通じる。つまり、このエピソードは必要なことではないので、書くべきではないのだ。
Bでは、サブスクリプションに関する説明が、読者に対して補足すべき必要な部分だと思う。なぜならば、明らかに読者は、ITに関心を持つ者が想定されるからだ。もし会計に興味を持つ者に対するコラムであれば、"802.11n機能"とは何なのかを説明するか、抽象的な"無線技術の新バージョン"などの語句を用いるべきであったろう。つまり、読者を想定した上で、必要なことは洩れなく記述し、必要でないことは一つも書く必要はないのだ。
第二の原則: 事実と意見(判断)との区別を明確にすることが重要である。
この点では、Aはまさに事実と意見が区別されていない文章だと思う。なぜならば、そのほとんどの文が意見や判断を含んでいるからだ。事実を書いていると読める文の中にも、「私は・・・だと思う。」という語を加えることのできる文が多くある。ぜひ、もう一度この観点のもとで読み返してみて欲しい。
第三の原則: 記述の順序について二つの要求にこたえること
まず、この原則の説明を先の書評からがっつり借りてくると、
一つは文章ぜんたいが論理的な順序にしたがって組み立てられていなければいけないこと。そして、もう一つは読者はまっさきに何を知りたがるか、情報をどういう順序にならべれば読者の期待にそえるか、ということに対する配慮にこたえることだ。
となる。
この点に関しては、Bが秀逸であると考える。
Bでは、「いきなり読み進める気分を削ぐような堅い書き出しで恐縮だが・・・」というパラグラフが冒頭におかれている。
このパラグラフがなかったとしても、前後のパラグラフだけで意味は通じる。
しかし、このパラグラフがなければ、コラム全体のストーリーの種類を誤って推察していただろう。さらには、このコラム自体を読まずに流していたかもしれない。
この冒頭の一つのパラグラフが、なぜこれから一見OSアップグレードと無関係なサブスクリプションの説明をまずするのか、この後どういった種類の結論が述べられるのか、という説明をはたしているのだ。つまり、読者に配慮がなされた記述の順序となっている。
第四の原則: 明快・簡潔な文章をこころがけること
このことは、理科系の作文(つまり論文)や仕事の文章では特に最低限のこころがけだと思う。つまり、必ず読み手が一つの文、一つのパラグラフに対して一意にその意味を取れるよう書かなくてはならないということだ。
この点については、両コラムとも意味がとりにくい文はないと思う。
一番こころがけしだいで良くできるのは、この項目だろう。自分でも明快・簡潔な文章を書くということを、まずは確実におさえていきたい。
今回このような基準のもとで、二つのコラムを読んでみた。
問題は、ここから自分の作文の水準向上にどうもっていくかだと思う。
とりあえず、モチベーション維持のためにも、しばらく『理科系の作文技術』を毎日少しづつ読んでいきたい。
さらに、文章うんぬんの他にAの評価が低かった理由は、内容がなかったから。自分の中に新しいものが得られなかったから。
まずはしっかりとした中身があるのが基本、そしてそれを良い形でアウトプットすることで良い作文ができる。
頑張ります。
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